当番幹事挨拶

第56回 臨床心臓電気生理研究会 当番幹事挨拶

野上 昭彦
このたび、第56回臨床心臓電気生理研究会(2026年5月30日開催)の当番幹事を仰せつかりました。長い歴史と伝統を有する本研究会の運営に携わる機会をいただき、大変光栄に存じます。
私自身、若い医師の方々から「心臓電気生理検査や解析を上達するにはどうしたらよいか」と尋ねられることが少なくありません。その際に必ずお伝えしているのは、「検査に費やした時間以上に、事後解析に時間をかけることが重要」ということです。実際の検査を振り返り、一つ一つの心内心電図の意味を考察する過程こそが、理解を深める最も確実な方法であると考えています。
この作業は、いわば将棋や囲碁のプロ対局後に行われる「感想戦」に似ています。感想戦とは、対局終了後に両者がその内容を再現し、勝敗を分けた一手や局面を振り返り、互いの棋力向上を図る重要な時間です。心臓電気生理検査もまさに同様であり、検査の「棋譜」を丁寧に振り返ることなしに、興味深い電気生理学的所見を見出すことは困難です。
しかし近年、技師やスタッフに3Dマップの作製を任せるのみで、自らEPラボでの解析を行わない「不整脈医」も少なくないように感じます。そのような姿勢は決して望ましいものではなく、今後の臨床電気生理学の発展を妨げかねません。 本研究会では毎年、選りすぐられた症例における高度な電気生理学的所見が数多く発表されます。その内容は非常に水準が高く、多くの症例が後日、国際的な英文誌に掲載されていることからも、証明されています。
今回の研究会でも、各演者の皆様が精緻に「感想戦」を重ねて得られた貴重な「棋譜」が披露されることでしょう。参加者の皆様とともに、その奥深い一局一局を存分に味わい、学び合える場となることを心より願っております。
第56回臨床心臓電気生理研究会
当番幹事 野上 昭彦
(東京心臓不整脈病院)